甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

「黒歴史か。そんなものに立ち会わされるとはな」
「立ち会わすつもりはなかったんですけどね。申し訳ないとしか言いようがないです」
「本当、あの飲み会の日はすっげー帰りたかったし、うざかったし、面倒くさかったし。
ケーキ食うわ、かぐや姫だわ、キスしろとか言うしな」
「わーっ、それ以上言わないで下さい」

畳みかけるように言うので、恥ずかしくなり蹲った。

「でも一番調子狂わされるのは、突拍子もなく現れて会いたかったとか何も考えてないような顔で言ったりするところだな」
「え……」
「なんなんだ、お前は、本当に」
「………なんなんだって言われても」
「好きなんですと言っただろ」

課長がしゃがんだ気配を感じて、私は顔を上げた。夜の空気のような澄んだ瞳に引き込まれる。

遅れて、独り言のような告白が聞こえていたことに気づきハッとする。恥ずかしくて背けそうになった顎先を向けさせられた。

「聞こえてたんですね」
「そりゃな」
「お耳汚しを……」
「なんだよ、それは」

呆れているように見えた。
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