甘いだけの恋なら自分でどうにかしている
「いっ……いち!」
「お……お前、力強すぎ」
「だって、たぶん、今じゃないと、今伝えないと、これからも課長と一緒にいられない気がするんです。
明日とか、明後日とかじゃたぶんダメなんです。だから1番でお願いします」
「あーあー。本当にお前はよくわかんねーこと言うな」
きつく抱きしめていた腕に課長が触れるから、つい緩めてしまう。優しくほどくと課長は向き直った。
「本当、小千谷といると取り繕うのがバカバカしくなるな」
「取り繕う? 課長が取り繕うなんてあるんですか」
あるだろとぼやいた。
「前に小千谷にさ、言いたいこと言えて羨ましいとか言われたけど、俺だって、100パーセント自分で生きてるわけじゃねーよ。
ただ小千谷と一緒にいると、よくわかんないけど、素直になれるし明るくなるのは確かだな。自分でいられる気がする」
「……」
「だから、一緒にいたいんだろうな」
少しぶっきらぼうだけど、思いが伝わってきて、胸の中が熱くなると同時に腰が抜けてへなへな座り込んでしまう。