甘いだけの恋なら自分でどうにかしている
「おいっ」
「すみません。なんか、びっくりして腰が抜けてしまって。少々、お待ちを」
課長はババアだなと悪態をついて笑う。
「課長、おやじよりひどいんですけど」
「この状況で、腰抜かされるのは初めてだから言いたくもなるだろ」
「それはそうですよね。私も初めてです」
「数々の伝説を作るな」
「ごもっともです」
もはやもうなんのムードもないけど、顔を見合わせたら笑えた。
「はいよ」と課長が手を差し伸べるから、迷わず掴む。引き上げる前に、わざと引っ張ったら、課長がゆっくり倒れこんだ。
「おい、今のは本当にあぶねーぞ」
課長は呆れていたのだけれど、私は調子に乗って「課長、ここキスするところです」と告げる。
だけど冷たく「なんの再現ドラマだよ」と突っ込まれた。
「もうぼろくそに言われたので、開き直ることにしました。あの、でも、本当にしたんですか?」
おずおず尋ねる。本当はずっと確認したかった。