甘いだけの恋なら自分でどうにかしている
「え、何?」
「勇者を見つけたっす」
「はっ? 勇者?」
言っていることがわからず訊き返すと、あの子と視線で教える。
「持田(モチダ)さんって言うんすけど、課長のこと狙ってるみたいっすよ。課長に立ち向かうなんて勇者っすよね」と小声で言う。課長は魔王か。
「あ、それ、私も思ってた」と後ろから若槻も同調した。
忙しくて課長を見る余裕もなかったのだけど、冷静な若槻が言うと説得力がある。
その視線の先にいたのは、第二営業所の女の子で、勉強会のときも可愛いなと思って目を引いた子だった。
たぶん中村と同じくらい若い。
その子も交えて、数人と課長が話していた。
「え、可愛いじゃん」
「何言ってんすか。若槻さんに比べたら、全然すよ。それに話しててあんまり感じ良くなかったんすよね」
「そうなの?」
「そうっす。前、同期の飲み会があったんすけど、なんかすごい小バカにされたような態度で話されたから。まあ自分がこんなんだからかもしんないすけど」
どうやら中村にはいい態度を示さなかったらしい。ちょっとしょげて見えたのでまあまあと諭した。