甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

「俺も誠実なんだけどな。なんで伝わらないんのかなー。じゃあ、この中だったら誰がいい?」

合コンかと心の中で加賀くんを制す。いや、何話してもいいんだけどさ。

「矢嶋課長がいいです」とはっきり聞こえた。迷いのない様子にドキリとする。
加賀くんのえーっという声がすると、また周りが笑った。
「課長、どうなんですか?」と加賀くんは質問する。

なんだか、この振りの答えは気まずくて聞きたくない。
さっさと取り分けて向こうに戻ろう。焦ると、お箸でさえ上手く使えなくなる。苦戦する始末に苦笑いするしかない。

「課長?」と加賀くんがもう一度声をかけた。
「ん?」
「なんかにやけてませんか? もしかして課長もいいと思ってたんですか、持田さんのこと?」と煽るような声が心臓に悪い。もういいや、向こうに戻ろう。

課長は「は? 何がだよ?」とすっとぼけたような返答をした
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