甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

「ああ、彼女? いるけど」
さらりと答えると、一気に力が抜けた。
「そうなんですか。ショックー」
「え、課長、彼女いるんですか? 知らなかった」と加賀くんも驚いていた。
「どんな人なんですか?」と食い下がらないといったように持田さんがすかさず尋ねた。

どんな彼女って親父っぽいとか、酒癖悪いとか、料理が残念とかそんな言葉しか浮かばないし、課長もどう形容していいか困っているに決まってる。
おまけにそんなことを言われたら、隙だらけに感じて持田さんもイケると思うに違いない。

「……まあ、可愛いけどな」
予想外すぎる答えに胸がドキッとした。

「見たい。写メないんですか。ていうか、課長、可愛いとか言うんですね」と加賀くんが前のめり気味で言うと
「ねーよ。あと調子に乗るな」と拒否る様子がおかしくて、にやけてしまいそうになるのをどうにか堪えた。
< 168 / 333 >

この作品をシェア

pagetop