甘いだけの恋なら自分でどうにかしている
オフィスに戻ると、若槻は自分のデスクにあった荷物をまとめる。
私が、鞄に入れっぱなしにしていたスマホを手に取ると
「小千谷さん、さっきの聞きましたか?」
「え?」
「課長が彼女いるって言ってたの」
「あ、うん、聞こえた」
「顔、にやけてますよ」
「え? 嘘」と思わず両頬を手で押さえてしまう。
若槻はクスクスと笑うと
「やっぱり小千谷さんだったか。課長の彼女って」
と話す。全てお見通しというような言い方だった。
「……え。はめられた?」
「いいえ。はめてませんよ」
「いや、はめたよね?」
「しいて言うなら、勝手にはまったって感じですかね」
「……」
にっこり言われてしまうと、何も言い返せない。