甘いだけの恋なら自分でどうにかしている
「うわっ」と変な声を上げると
「入ってねーよ。さて帰るかな」
どうやら冗談だったようで、潔く離れる。
「あ、ちょっと待って下さい。私も帰ります」と腕を掴んで引き留めた。
「ていうか、何するんですか」と反論すると
「なんかムカついたから」
ひょうひょうと答えるけど、子供かと思った。
「……なんか今日、若槻に私が初々しくて高校生みたいって言われたけど、課長のブレザー姿が浮かびましたよ。今の悪ガキ具合に」
「残念だったな。俺は学ランだ」となぜかドヤ顔で返すけど学ランというワードにときめいてしまう。
「え? そうなんですか? 見たい、ぜひ」
「絶対、嫌だ」
「今度課長の家に行ったら、アルバム探します」
「そんなの持ってきてねーよ。お前、鞄は?」
「あ、デスクに置いてます」
そう言うと手を繋がれたので、応答するように繋ぎ返し廊下へ出た。