甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

「真唯子」ともう一度課長が私を呼んだ。
「はい」
「なんか、わかんねーな」
「ふふふ」
自分もそう感じられるか確かめようとしたらしくて、面白い。

そこで急に足を止めたので、つられて立ち止まった。
見つめていると不意打ちで唇を奪われた。
驚きとドキドキで胸がいっぱいになっていると、「ああ、わかった」と課長が私の口元を指で触れ、呟いた。

「さ……幸男になりました?」と尋ねると
「お前、それで呼ぼうと思ってるだろ」睨まれた。
「ばれてましたか。幸子と幸男でいこうかと思ったんですけど」
「なんのコンビだよ。絶対、嫌だ」
明らかに不服そうなので、呼びなおしてみる。
「顕」
「なんだよ」
「練習です。ふふふ」
「はいはい」と私の頭にポンッと手を置いて、軽く撫でる。口元は少し緩んで見えた。
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