甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

「何その展開」と呟くと、若槻は推理するみたいに「ちょっと突っかかる前はどんな話をしてたの?」

「えー。なんだっけなぁ」
「そこが一番重要だと思うんだけど」
「あ、そうだ。なんか天野先生の話してたんすよ。イケメンのドクターに会えるのが嬉しいとかそんなこと」

天野先生という名前にドキリとしたけど、若槻の様子は至って平静だった。

「ああ」と私と若槻は声を揃え、「嫉妬じゃない?」と、私も思っていたことを若槻がさらっと言ってのけた。

「えー、まさか。加賀っちとは友達だし」
「でもキスしたのは事実でしょ」
「そうっすけど」
「友達がキスする?」

そう言われ口をつぐむと、朝礼が始まる時間になりそうだったので、慌ててフロアへ戻った。
< 184 / 333 >

この作品をシェア

pagetop