甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

「蓋なんかしてますかね」
笑うので
「まあ、本人に言うかはさておき、感じたこと全部一回口に出したら? そうしたら本音が見えてくると思うけどな。今みたいにキスは気持ち悪くなかったなとか、わかるじゃん。
じゃあそこまで嫌いではないって気づくし、もう一回位してもいいかなーとか、いやもっと彼に触れたいとかさ、もしかしたらそういう気持ちがあるのかもしれないし。例えばね、例えば」

「……確かにそうっすね。私、自分がどうしたいかわかってないから、加賀っちの気持ちを知りたがってた気がしたっす。そこから自分はどうするか決めようみたいなことをしたかったのかもしれない。順番が逆な気がしてきました」
少し、吹っ切れたように言った。

先に帰りますと言ったのは中村なりの気遣いみたいで、いつものようにカウンターに行くか顕に訊ねると、「いいよ、ここで」と言った。

「本当に人の相談事程どうでもいい話はないな」と顕は脱力しながら言った。
「本当にはっきりしてるね」
「そうだろ。時間の無駄だろ。ああでもないこうでもない言ってる内に状況が変わることなんてざらにある。タイミング逃せば相談したことの価値なんてないに等しいからな」

それはそうだけど、言い切られると何にも言えなくなってしまう。
こういうところ、好きだけど、たまにとても冷たく感じる。
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