甘いだけの恋なら自分でどうにかしている
テーブルの上に置いていたスマホが鳴動した。
叔母からだった。
母の妹で、岩手の盛岡に住んでいる。たまにだけど、こうして連絡をくれる。
「はい」
「真唯ちゃん?」
うんと相槌を打つ。
「今、電話大丈夫? 元気?」
「元気。久枝ちゃんは?」
元気と答えると、おばあちゃんの体調や高2の娘の多実ちゃんが仙台の大学に進学を希望していることを話しだした。
まあもうちょっと学力上がらないといけなんだけどねと笑ってから、
「そんなことより、どうなの? あの彼とは結婚とかの話にならないの? そろそろするかもなぁなんてこの前話してたじゃない?」
声のトーンが上がる。どうやらこちらの方が本命だったらしい。
「あ、別れた」
「え? 別れたの? 嘘? えー、なんでなんで?」
と驚きと落胆が入り混じったように言う。
「まあ、なんだろう。方向性の違いってやつかな」
「バンドの解散か」
軽快に突っ込まれた。
「はは。あっ、でも今、付き合ってる人いるから」
「えっ? もう彼氏いるの? 最近の子は、切り替え早いわねー」
「最近の子って、私、31だよ。多実ちゃんみたいな子を最近の子って言うんだからね」と呆れると「私から見たら、まだ最近の子よ」と笑った。