甘いだけの恋なら自分でどうにかしている
だけど新たに疑問が浮かぶ。
「誕生日プレゼントをもらうって事は、顕も若槻にプレゼントをあげたりしてたってこと?」
まさかと顕はグラスに口をつけた。
「もらったのって、あのボールペンだよね? 高そうなブランド物の」
「ああ。でもあんまりブランドとか興味ないから、高いのかは知らない」と顕は答えた。それに嘘はないと思った。
ただ上司はたまた元姉の婚約者に義理で渡すには高い品に私は思えた。何か別の意図があるような気がして
「なんていうかさ、受け取りやすくした本命プレゼントって感じがするよね。あれ」
なんてねと冗談めいて尋ねたつもりなのに、自分でも棘があった。
「本命プレゼント?」
うんと頷いてから
「顕ってさ、本当は結構若槻とプライベートで会ったりしてる?」
「はっ? 会ってねーけど」
「私と付き合う前も? 仕事終わってからご飯とかさ、行ったりしなかった?」
「……何か疑ってるのか?」と質問で返され、みぞおちが熱くなった。
「私が聞いているのですが、答えていただけますでしょうか」
「なぜ敬語になる」
「若槻と、昔、何かあったりした?」
「何かって?」
「何かあったりした? と、言われて、今、思い浮かんだこと」
黙るので、これは何かあったのだと自然に伝わってくる。
動悸が速くなってくる。答えやすく、聞きなおした。
「ああ、ごめん………恋とか好きとかそういうこと」
ふぅと溜め息を吐かれてから、観念したのか
「あったな」
とだけ、呟いた。