甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

「生まれつきだ」
「生まれつき、口が悪いんだ?」と笑うと少ししてから「まあ兄貴が元ヤンっつうかそんな感じだったから、口の悪さはそこからきてるのかもな。家がそういう溜まり場だったからな」
「へえー、意外。お兄さん、弟思いのほんわかした感じの人かと思ってたから」
「まあ、ある意味天然だから、ほんわかしてるのは当たってるかもな」
と呟いてから
「でも連れて行ってやりたいな。何もないところだけど、すごくいい町だよ」と目を伏せた。
私はその言葉に気をよくして、へへへと笑う。

しばらく海を眺めてから顕は「お前さ、俺が秋田に帰るって言ったら着いてくるか?」と尋ねた。

どういう意味だろうと一つ間を持って考えた。帰省するときに親に紹介したいという意味だろうか。
それなら喜んで着いていくに決まっている。

「いつ帰る予定なの? 顕がいいなら、私はいつでも大丈夫だけど」
「悪い。質問がわかりづらかったな。俺が会社を辞めて、秋田に戻るって言ったら着いてくるか? って、聞いたんだ」

想像もしていなかったことに言葉が出てこなかった。

そこでアラーム音が鳴り顕は「アラーム設定したままだった」とその場を去ってしまって、その話の続きを聞けなかった。
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