甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

「でも吐いてしまったものは仕方ないし。
顕人も仙台に今いるから、偶然会ったら適当に話をあわせてほしいって頼まれたんだ。
まあもともと仲がいいわけでもないし、あいつは俺のことよく思ってもなかったからな。
なんつうか萌花と付き合ってた時、ちょっと遊びがすぎたっていうか萌花を傷つけたとこ見られたせいもあって。
嫌われても支障ないとか思ったんだろうな。
誰も好きこのんで嫌われたいとは思わないのにな」

まあ身から出た錆って奴かと力なく笑った。

「だから、あいつは最期まで顕人のことが好きだったんだよ」

言い切ってから、いやどうだろ、その後、他にいい奴ができたとかあったりしてなと言った。
彼なりの冗談なのだろうけど、私は笑えなかった。

顕がさっぱりした様子で、婚約破棄や彼女の死について話していたのは、そんな嘘があったからだ。

「ひどいです」
私は言った。

「本当にひどい話だよな。俺、被害者なんだよ、本当は」
「萌花さんも、天野先生もひどいです」
天野先生は私を見やる。
「だって、こんな話して、顕にこの事を言うか言わないか託したじゃないですか。私に」
先生は、ふっと笑う。