甘いだけの恋なら自分でどうにかしている
「よし。じゃあ私も少し手伝えるくらい、料理の腕あげないとな」
その一言で、私が着いて行きたいという気持ちが伝わったようで
「真唯子はやりたい仕事をやればいいだろ」
「あっ、私の料理の腕があがらないと思ってるからでしょ」
「まあな」
「来年、見てろ」
「まあ冗談で、好きな事しててほしいだけだよ」と言うので、優しさが伝わり、肩の力が抜けた。
「……そっか」
「家はいいのか?」
「え?」
「この家、誰も住まなくなるだろ」
顕がそんなことを気にするとは思わなくて驚いたけど、そういえば付き合う前から、ここで一人で暮らす私のことを淋しくないかと気遣ってくれた事があった。
もしかしたら、私よりも私の身辺について色々考えてくれているような気もした。
「うん。大丈夫。だって、遅かれ早かれ実家は出ていくものだと思ってたし。この家だって、いつかは手放すことになるとは思ってたよ。たまたま一人になるのが思ったより早かっただけで、手放すのが早かっただけだし」
本当はもう少しここで暮らしたかった。
だけど、そんな覚悟は昔からあったという顔で頷いてみせると、そっと私の肩を抱き寄せた。