甘いだけの恋なら自分でどうにかしている
忘年会が始まった。
顕は遅れてくるというので、まだ姿が見えていない。
端のテーブル席を中村と若槻で囲んだ。
斜め前の席に加賀くんの姿を確認する。様子を見て席を移っておいでと話してはおいた。
数十分後。
中村はそんな作戦が遂行されようとしているとは全く気付かぬ様子で、イチゴミルクを舐めるように飲みながら「世間はそろそろクリスマスっすよねー」と遠い目をしている。
「小千谷さん、何するんすか?」と尋ねる。
「いや、なんの予定もないけど」
「はあ、まじすか? 付き合って初めてのイベントじゃないですか」
「……いやいや中村、声大きいから。たぶんね、私も彼もあんまりそういうの興味ないのかもしれないねー」と笑って受け流していると
「うぃーっす」とグラスを持った加賀くんが予定通りやって来て、私の隣に腰を掛けた。
それと同時に中村は立ち上がり、「トイレ行ってくるっす」と席を外してしまった。
動きが速すぎて引き留められなかった。いや、トイレと言われたら引き留めれるわけがないのだけど。