甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

グラスを持ったまま加賀くんは首を垂れた。
まあ飲もうとなだめるけど、中村はすぐに戻って来ないので益々暗くなる。

「……本当にトイレですかねー」
「トイレじゃない」
「にしては、長くないですか」
「混んでるんじゃない」
「このまま帰ってこなかったりして。俺、本当に避けられてますよね」

加賀くんが意外に打たれ弱くて、フォローに困ってしまう。
そうだ。この際、若槻にも協力してもらって、話しやすい雰囲気にしてもらおう。
打ち明けていいか確認しようとすると「避けられて当然じゃない」と若槻は平然と爆弾を投下した。

「……そうですよね。当然ですよね。話したいのは俺だけですよね」
「ていうかさ、話してどうなりたいの? 友達に戻りたいっていうのなら、それは都合がいいんじゃないの」と淡々とした口調で詰め寄る。

加賀くんがさらに落ち込むかと思ったのだけど
「いや、好きなんです。あいつのこと。だから、ちゃんと話して伝えたいんです」と、はっきり告げるので驚いた。
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