甘いだけの恋なら自分でどうにかしている
「あいつって?」
「それは中村さんに決まってますよ」
「でも加賀くん、誰のことでも可愛いって言うし、合コンばっかり行くし、信じられないんじゃないのかなぁ」と背もたれにもたれて、腕を組む。
「それは、否定できないです。
確かに出会いが欲しくて合コンばっか行ってましたし、可愛いとか軽々しく口に出せるほうかもしれない。
それに、若槻さんのこともまじで可愛いし理想だって思って見てたし。
本当に、若槻さんみたいな人がタイプだって思ってました。
けど、違うんですよね。
うまく言えないんですけど、感じてみて、ちゃんと人を好きだってわかるんだなって、若槻さんに憧れていたような感覚とは全然違うものだったんだなって、気づいたんです。
だから、ちゃんとあいつのこと好きですよ。大事にしたいって感じています」
さっきまでの暗さが嘘のような、熱を持った言葉だった。
「だって」と若槻が、私の肩越しに声をかけるので、振り返ると中村が立っていた。
中村は照れ臭さと気まずさを隠すように頭をかいて、ハハッと笑う。
「いや、今、何も聞いてないっす……って、無理ありますよね。あはは」
腕がゆっくり落ちると、そのまま踵を返して逃げ出した。
加賀くん追いかけてと声をかける間もなく、その後をすぐ追いかけて行った。