甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

「へえ」

若槻が自分の恋愛のなれそめを語るのは初めてだったので、自然と聞き入ってしまう。

「私、今まで、本当に好きって思った人とは付き合えたことなくて。
好きだって思って自分から行くと、相手は好きな子がいるからとか彼女がいたりとか……まあ、あとフリーだとしても相手にしてもらえなかったかりとか。

今の彼、友達の紹介で知り合ったんですけど、正直、今まで好きだって感じたようなタイプの人じゃなかったんですよね。

優しくて温かくって感じのいい人で。私、けっこうクールというか、自分に興味なさそうな素っ気ない人に惹かれてしまう傾向があって」
「若槻に興味を持たない男、そんなにいるの?」
「いますよ。私をなんだと思ってるんですか」と笑ってから

「今の彼、本当に理想と真逆で、向こうからぐいぐい来ましたし、付き合うのもお試しでとか言われて押し切られて始まったようなものでしたし。
だから、どうせ、すぐ終わるんだろうなって思ってたんです。

でも彼といるうちに……彼に感じてた優しさとか温かさっていうのが自分の中にもあったんだなって気づいて、彼といると自然と自分のことも好きになれるようなそんな気持ちが、なんかすごく新鮮で、ありがとうって感じて、一緒にいると心地いいんですよね。
たぶん、理想を求めてたら、手に入れることや現状を維持しなきゃって必死になってしまって、わからなかったと思います」
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