甘いだけの恋なら自分でどうにかしている
言わないつもりでいたのに
定禅寺通りのケヤキ並木は、冬の風物詩であるページェントの光で溢れていた。
「あ、真唯子さん」
「綾仁くん、こんばんはー。後で二人くるんだけど席空いてるかな?」
「カウンターだけなら、今、空いてますけど。テーブル席、空いたら声かけますね」
「うん、ありがとう」
最終的に顕と若槻がいたグループはまだお店に残っていたので、先に向かうことにした。
結局、あの後、気まずそうな顔をした加賀くんと中村が戻ってきて(深くは聞けなかったけど、うまくいったっぽい)、若槻に遠まわしにいじられて、笑えたけど、やっぱり幸せそうな姿が見れて良かったと心から思った。
カウンターの奥に華さんがいて、綾仁くんは、フロアや厨房を行き来して忙しそうだ。
「今日、会社の忘年会だったんです」
「あっ、そうだったんだ」
「華さん、若槻知ってますよね?」と尋ねると一瞬時が止まったみたいに固まるので、少しして萌花さんを思い出しているような気がして言い直した。
「あ、ごめんなさい。若槻希々歌です。会社の後輩なんですけど、華さんがお店出したのSNSで知ったみたいで、行きたいって言ってて。今から来ますよ」