甘いだけの恋なら自分でどうにかしている
とりあえず黙って渡すのはやめようか。
誕生日プレゼントと同じ類にされても困るし。
自分のデスクに戻り、パソコンを立ち上げる。
「早いな」
背後からの声に背筋がピンとなる。課長だった。
「うわ……じゃなくて、おはよ……ござります」
「足、どうだ?」
「どうにか、こうにか」
「……ああそう。無理すんなよ。面倒くさいからな。そういうの長引くと」
「はっ……はい」
続いて若槻がフロアに入ってきて「おはようございます。早いですね」と言うものだから渡すタイミングを失ってしまった。
お昼になり、ひとりでランチを食べていると、あの夜のことが急にクリアになって思い出されてきた。
ひとつ思い出すと、数珠つなぎのように場面が繋がって、頭を抱えた。
あの日の飲み会の帰り道はこんな感じだったんだ。