甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

胸がザワザワして
「綾仁くん、さっきから、質問が変だよ」
苦笑いで返した。
「すみません。矢嶋さん、いつも素っ気ない感じがしたから気になって」
「まあ、お店ではね。でも、あれが顕のデフォルトだから」と笑って答えると、急に胸が痛んだ。

「真唯子さん?」と顔を覗き込まれる。
「何かあったんですか?」と優しく尋ねられるので、私は、不安を打ち明けたくなる。でも綾仁くんに言っていいのか迷う自分もいる。

だけど、結局、耐えきれなくて
「昨日ね、あの後、綾仁くんの言う通り、話したんだ、顕に。
ほら我慢するとこれからも我慢しなきゃいけなくなるって言ってくれたし、顕も不安がないかって心配してくれたから。
だけど、本音を言ったら、突き放されたっていうか、彼の優しさが自分が望んでいたことと違う形で表れて、なんかちょっと堪えるなぁ」と笑った。

どんな話をしたのか訊かれ、昨日のやりとりを簡単に話す。
「別に別れ話をされたわけじゃないのにね。すごく落ち込んじゃって。ごめん、こんなことを綾仁くんに言ってる自分もどうかと思う。甘えてるね」
「無理に笑わなくていいですよ」
諭すように言った。大人びて見えて、ドキッとした。
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