甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

「真唯子さんがいいなら、いつでも甘えてくださいよ。僕に」
だってと続ける。
「僕は、真唯子さんの笑顔の為なら、なんだってしたいですよ」
と綾仁くんは言った。私はハッとして彼の顔を見返した。
目が合うと「幸せにします」と、今度はしっかり、私を見つめて言った。
戸惑いはあるのだけど、胸をくすぐるような甘さを感じた。

求めなくても、綾仁くんは、私の欲しがっていた言葉をすんなりくれた。
だけど、胸の痛みはまだ残っていて、ズキズキと痛んでならない。

「いや、綾仁くん。冷静になって、私だよ。華さんなら、わかるけど。やっぱり気の迷いじゃないのかな」
「真唯子さん、それ、すごく失礼ですけど」とムッとした表情を見せた。
「あ、ごめん。そうだね。ごめん。でもね、綾仁くん、私、やっぱり……」

気持ちを伝えようとすると、着信音が鳴り、綾仁くんはスマホを手にした。
「あ、華さんだ」と呟く。
出るか迷っているように見えて
「出ていいよ」
「話、終わってからでも」
「急用かもしれないし。出て大丈夫だよ」と促した。
少しばつが悪そうに
「わかりました。あ、じゃあ、ついでにそこのコンビニで飲み物買ってきますね。何がいいですか?」
「ありがとう。じゃあ、お水がいいな」と見送った。
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