甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

「この恰好のせいか、真唯子さんの家から近いせいか」
綾仁くんは着ていたランニングウェアをつまんで見せた。
「一緒に走ってたと察したみたいで……真唯子か? と睨まれ、因縁をつけられました」とちょっと悲し気に目を伏せた。
課長、怖いっすと言う中村と重なって見えて笑ってしまう。

「……因縁。たぶん、本人としては、ただの質問だったんだと思うよ」と顕の肩を持つ。
「そうですと答えたら、昨日の今日で随分仲良しだなと言うので、ちょっとムキになってしまって、随分、余裕ですねって返してしまいました」

そうしたら、無視してお会計をすませて出て行ってしまうので、慌てて追いかけたそうだ。コンビニの駐車場で呼び止めると、立ち止まり
「なんだよ」
「いや、気にならないんですか。僕が言うのもあれですけど、一緒にいるの嫌じゃないんですか」
「嫌? まあそうだな。お前が真唯子に不快なことするのは、嫌だけど、そんなことしないだろうしな。残念だけど、嫌になれねーな」と溜め息を吐いた。
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