甘いだけの恋なら自分でどうにかしている
ブーケは投げないものなのですね
奇跡の愛だよ
若槻の結婚式の当日。
目が覚めると、みぞおちの辺りにスーッとした清涼感があり、心地よかった。
カーテンと窓を開けて、風を入れる。そのひとつひとつの動作に愛おしさがあった。
新調したパーティドレスに身を包んで、美容室で髪をセットしてもらうと、背筋がすっと伸びた。
木々に包まれたウェディングと謳われていた式場は、優しい緑と澄んだ空気が満ち溢れていた。
門をくぐると、奥に白い西洋風の建物が見えた。
大きなプールの間に白い橋がかかり、芝の上の白い一本道に繋がっている。階段から入り口の大きな扉の前にかけて、レッドカーペットが敷かれていた。
受け付けを済ませると「小千谷さーん」と中村に呼ばれた。
「あ、中村」
「この格好、大丈夫すか? 実は結婚式初めてで」
恥ずかし気に俯くけど、レースが施された水色のドレスは愛らしかった。
ショートの髪も少し巻かれて、小さな花をつけている。
「すっごい可愛いよ」
「本当っすか?」
「うん」
「あ、加賀っちと課長だ」
私の肩越しに手を振る。振り返ると、二人が立っていた。
フォーマルなスーツを身にまとっていて、いつもより品よく落ち着いて見える。