甘いだけの恋なら自分でどうにかしている
合流すると「小千谷さん、なんか見違えますね。中村さんはそうでもないけど」と加賀くんが言うと「加賀っち」と怒った振りをする掛け合いに思わず目を細めてしまう。
加賀くんが、可愛いと思っているのはとなんとなく伝わってくる。
顕は「一眼レフ持ってきたのか」と中村に問いかけた。
中村の肩にカメラがかけられていて、それを手に取り
「はい。実は、カメラ好きなんすよね」と答えると「若槻さんのドレス、絶対綺麗ですよね。リアルプリンセス間違いなしっすよ」とワクワクした面持ちで、式が始まるのを待った。
しばらくしてチャペルの方へと案内があり、向かった。
白い祭壇の奥は大きなガラス窓で、そこに広がる木々や差し込んでくる柔らかな光が祝福しているように見えた。天井や、壁にあるガラス窓の陽もバージンロードを明るく照らしている。
顕に続いて座った。白い椅子に置いてあった讃美歌が書いてあるパンフレットを眺めていると「別のにしたんだな」と言った。
「え?」
「何着てくか悩んでただろう」
「うん。新しいの買っちゃった」
「優しい雰囲気になるな」と呟き、「うん、可愛いよ」と確かめるように言う。私は嬉しくて、うんと小さく頷くと、愛を歌うようなパイプオルガンの音色が会場を包み込んだ。