甘いだけの恋なら自分でどうにかしている
「課長、私サーティワンなんですよ。ちなみに来年はミニーで、次は桑田啓祐になる予定です」
「なんでミニーが桑田啓祐になるんだよ。ていうかお前、今挙げた存在全てに失礼なこと言ってるからな」
「課長は、見つめ合うと素直にお喋りできないことありますか?」
「そうだな。今みたいに人の話を聞いてない女と話していると腹ただしくて、素直におしゃべりしたい気分じゃなくなるな」
「えーっ、なんすかそれ? ところで私はサーティワンですけど、かっちょーは、なんでしたっけ? 桑田啓祐くらいでしたっけ?」
「あ? 歳か? 34」
「34……三枝? 桂三枝?」
「もう眠れ。出来れば永遠に」
「冗談くらい言わせて下さいよー」
「ならひとりで新婚さんいらっしゃいにでてスキルでもあげてこい」
「無理じゃないですか。私、独身さんですよー」
「なんでもいいから、今すぐケーキを食え。俺はもう帰りたい」
「いっただきまーす。あ、食べます?」
「甘いのは嫌いだ」
「そっか。あ、なんか読みます? 漫画とか小説とか、あ、映画もけっこう借りてまして。ちなみに最近読んでる小説はといいますと」
「ひとり日和か?」
「えー? なんでわかるんですか? そうです青山七恵さんの」
「目の前にあるからだろう」
「あ。そっか。だからか」
「失恋でもしたのか」
課長は言った。
ふっと彼の顔が頭をよぎった。
失恋。