甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

「そういえば、新郎さん、めっちゃ優しそうな人だったっすよね。なんすか、あの慈愛に満ちた眼差し。でも福の神っぽい感じではなかったすね。予想は当たらなかったっす」
「そういえば、婚約者は超イケメンか福の神っぽい人かなとか極端なこと言ってたね。足して二で割った雰囲気かな」

笑っていると、華やかなウェディングソングが流れた。
新郎と腕を組んだ若槻が会場に現れる。沢山の花々や祝福の笑顔に包まれている二人は、幸せが溢れている。

アットホームな雰囲気で披露宴は進んでいく。
中村はときどき、カメラマンと間違えるようなアングルから若槻の撮影を行っていたので、加賀くんに「加賀くんより、若槻ファンだね」と言ったら、困ったように笑っていた。

二回目のお色直しが終わると、艶やかな和装に変わった。
ぐんと雰囲気が変わり、思わず見惚れる。式場がライトダウンすると、静かなピアノのしらべが聴こえてきた。

司会者が「ここで希々歌さんのお姉様である若槻萌花様からメッセージビデオが届いてます」と、伝えた。
若槻は驚いたように目を丸くするので、サプライズの演出なのだろうと思った。

スクリーンに女性の姿が映し出されると、私は、吸い込まれるように見入ってしまった。
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