甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

中村が顔を上げると
「あれ? なんで小千谷さんブーケ持ってるんすか?」
驚いたように、だけど晴れやかな笑顔になるとカメラのレンズをこちらに向ける。

「ていうか課長と小千谷さん、なんで手繋いでるんすでか?」
加賀くんは状況を飲み込めないといった表情を浮かべた。

私は自然に繋いでいた手に驚いたのだけど、顕と顔を見合わせると笑った。

風が優しく頬を撫でる。どこからか飛んできたフラワーシャワーの花弁が舞う。

それは、幸せは今ここにあるのだと、導いてくれる光のようだった。

尊く、愛しく、今ここに――。
< 297 / 333 >

この作品をシェア

pagetop