甘いだけの恋なら自分でどうにかしている
課長のあまり飲むなオーラが凄かったので、焼酎の水割りを注文して終わりにした。
とりあえず、今日は無礼は働かなかったし、あの日のお詫びはこれでおしまいのはずだったのに、
「課長、話が違うじゃないですか」
「は?」
「お会計されてます」
「そりゃ、さっきしたから当たり前だろ」
「いや、ご馳走するつもりだったんですけど」
「小千谷に奢られたら、なんか後が面倒だし。形だけなら別にいらねーよ」
「……」
「出るぞ」とコートを羽織る。
なんかさっきから、痛いとこ突かれている気がする。
全部、聞き流していたけど、課長の言うことがもっとも過ぎて受け止められないでいた。
慌てて後を追い、課長の背中に向かって
「すみませんでした」と呼びかけた。
振り向くと
「酔ったこともそうですけど、家に連れて行ってくれて助かりました。ありがとうございました」
課長は小さく頷いただけで、私が来るのを待たずに進むから、慌てて隣に並んだ。
さっきのことには何も触れず、腕時計を見ながら
「電車間に合うな。小千谷、今日は歩けるよな」
「はい。歩かせていただきます」