甘いだけの恋なら自分でどうにかしている
「疲れたんです。彼がわからなくて」
私はぼんやりと話し出していた。
「あんなに大事な時もあったのに、本当は連絡が取れなくて安心してる部分もあって。私、彼のこと好きじゃなかったんですかね?」
何を訊いてるんだろうと、表情の変わらない課長の顔を見て思う。そんな答え、課長がわかるわけもないのに。きっとまたバカにされる。
「気持ちは変化するもんだろ」
課長は呟いた。
「それにどう折り合いをつけていくかは自分次第だ。別れて良かったと思える部分があるなら、それが事実だろ」
「そうですよね。すみません。私、何言ってんだろ」
インターフォンが鳴って、どきりとした。こんな夜中に誰だろ。慌ててモニターを見ると彼がいた。
なんで、いるの?
もう一度鳴る。
怖いと思った。別れ話を改めてするつもりなのか。またいつものような喧嘩をするのか。そう思うとたまらなく怖かった。
「お前の彼氏?」
課長が言う。
「……あ、はい」
「どうすんだ?」
「……どうするって」
『別れたかったんだろ?』
課長の言葉を思い返す。割り切れる気持ちではないけど、やっぱり別れたかったんだ、私。
「会わない方がいいですかね」
「さあな」
応答しないでいると、またインターフォンが鳴った。