甘いだけの恋なら自分でどうにかしている
「今、いい?」
無言で頷いた。リビングまで誘導すると、ソファーに向かい合うように座った。
「電話でなくてごめん」
「うん。元気だった? 心配した」
「うん。ちょっと色々考えてさ」と黙る。
それから、
「最近俺ら、うまくいってなかったじゃん」
と切り出した。
「うん」
「喧嘩ばっかだし。
それで真唯子と少し距離を置いてみたらどうなるのかなと思ったんだ。
俺も一人で考えたかったし、少し真唯子の気持ちを試したかったのも正直あった――。
でも真唯子からくるのは電話だけだし、会いに来るとかそういう事しなかっただろ。
なんか悲しくなってさ。
なんとなくもう気持ちがないと言われてるような感じがした」
「そんな……」
ことないと言いそうになるのを飲み込んだ。
彼に「俺のことなんかどうでもいいんだろ」とか、私の気持ちを決めつけられる度、喧嘩になるのが怖くて「そんなことない」「そんな風に思ってない」と言い続けていた言葉が自然に出そうになる。
私、まだ自分のこと守ろうとしているんだと自覚する。
「だからこのまま別れた方がいい気がしたんだよ。
そう決意してさっき荷物取りに来たんだけど、真唯子の家を出てからまた考えちゃって。
これで本当に良かったのかって。真唯子の気持ち、訊いた方が良かったんじゃないかなって」
「うん」
「真唯子、俺のことまだ好き?」
そう訊き返されて、今までだったら悩みながら「好き」と返していたのに、「ごめん」と返事をしていた。