甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

くすくすと笑い声が聞こえ、斜め右方向に視線を向ける。

営業事務の若槻希々歌(ワカツキノノカ)が口元を手で押さえているが、明らかに笑いが溢れていた。

去年まで肩を並べて仕事をしていたせいか、若槻は私に懐っこいし、ボケにも的確に突っ込みをいれてくれるのでこういう居たたまれない場面でも、赤面ひとつで終わらず笑い話に変えられるので、助けられることが多々ある。

「若槻」とわざと睨む。

「あ、ごめんなさい。おかしくて。というか、おはようございます」
「おはよ」

今日は外回りしてからオフィスに来たから、顔を会わせるのが午後になった。

「今日もなんだか眩しいね。若槻は」

「あ、分かります? 髪切ったんです、3センチも」と、にんまりとした笑顔。そんな妙な長さはわからないけど、いつ見ても可愛いから出てくる言葉だ。

若槻は、驚異的に顔が小さく手足が長い。おまけに顔も整ってる。たぶんみんなの目の保養。
たぶんここ仙台第一営業所の花といって過言ではない。
12月に結婚式を控えている、いい御身分だ。
(交際数ヶ月のスピード婚)
陰で泣いた男は何人かいたであろうと想像できる。
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