甘いだけの恋なら自分でどうにかしている
知らないことが幸せでした

デートのお誘い?


廊下を歩いていると、足元にボールペンが転がってきた。
緑と黒の二色にゴールドの縁取りがある。
掴むと正面から手が伸びてきたので、顔を上げると危うく顔がぶつかりそうになった。

「課長」
「悪いな」
「どうぞ」

差し出すと無言で受け取る。
「課長のペン、お洒落ですね」
「ん? ああ、貰い物だよ」

へええと感心する。たぶんだけど高級ブランドのものに見える。そんなものをくれるなんてとっても特別な気持ちがこもっているもののように感じた。

「課長も誰かに大事に思われてるんですねぇ
」としみじみしてしまう。
「はっ?」
眉根を寄せたけど、私は調子にのって尋ねる。

「誕生日プレゼントですか?」
「そうだけど。悪いか」
「いっ……いいえ」

機嫌を損ねたように感じて慌てて言い直す。
そこで、デスクの中に入ってた箱の中身がこれだったのかなと勝手な解釈をした。
だけど、社内でこんなプレゼントを渡す、そんな深い関係の人が課長にいるのか。疑問に湧いた。
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