甘いだけの恋なら自分でどうにかしている
なべっこ遠足に行きましたら

なべっこ遠足


どうでもいいことを気にしている。
あの状況でどうして私にキスをした。あの日、あんなに嫌々私と話していたのに。
どうしてキスするという選択ができるのか謎で仕方がない。
もしかして課長、前から私のこと好きだったのか?
と、思った瞬間、あり得ない発想で全身に鳥肌が立った。

運よく課長は今週、学会に参加とか出張だったりで顔を見なくて済むことが多くてとりあえず安堵した。



気づけば芋煮会もとい、なべっこ遠足である。
何台か車を乗り合いして、現地へ行くことになった。
家が近かったので、課長に中村と一緒に乗せてもらうことになったけど、まともに顔を合わすのがあれ以来という感じでなんだかドキドキして仕方ない。
平常心と自分に言い聞かせながら車が到着するのを待った。

「小千谷さん、やばいっす」と私が乗車するなり、先に乗っていた中村が興奮した様子で
「何?」
「課長がきりたんぽを持ってきてくれました」
今回は課長がいるので、従来通りの芋煮ではなくてきりたんぽ鍋にしようという提案が通った。あとはバーべーキューと、他に持ち合わせてきたものを食べる感じだ。

「秋田の人って誰でもきりたんぽ作れるんすねぇ」と中村は感激している。それは偏見のような気はしたけど。
しかし、意外だ。三角巾と割烹着姿でご飯を握る課長の姿が浮かぶとほっこりして笑えた。
「お母さん」と感心して呟くと「誰がお母さんだ」と課長に睨まれた。
いつも通りでホッとした。意味とか考えず、やはり闇に葬り去ろう。
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