甘いだけの恋なら自分でどうにかしている
「若槻さんの婚約者ってどういう感じなんすかね」
「私も見たことない。見せてくれないんだよね。写メとかさ」
「式までのお楽しみって感じっすよね。やっぱり超イケメンなんすかね。それとも顔っていうより中身重視で、そうでもなかったりすんすかね。福の神みたいな顔だったりして」
「福の神って?」
「なんか優しそうじゃないすか」
それを聞いていた加賀くんが
「今からでも、俺に乗り換えないかな。若槻さん」とぼそっと呟いたのを、中村がはいはいと受け流した。
きりたんぽ鍋が出来たと若槻がよそってふるまった。鶏ガラベースのだしや野菜の甘味をきりたんぽが吸っておいしいし、もちもちした触感と程よく残った粒の食感がたまらない。
「課長、おいしいです」
「まあな」と素っ気なく言うけど、ちょっと嬉しそうな感じが伝わってきて心の中がふんわりとした。
お腹も満たされた頃、話題は若槻の結婚準備に変わる。
「若槻、結婚式の準備どう?」
「まあ順調ですけど。でも結婚式の準備って大変ですよね。もっと楽しくできると思ったのに、彼ったら私に殆ど任せっきりだから、イライラして喧嘩ばっかりで」でと眉尻を下げた。