甘いだけの恋なら自分でどうにかしている
「私のお姉ちゃんも今年、結婚式したんですけど、同じようなこと言ってましたよ」と営業事務の子も同調した。
「やっぱり? どこもそうなのかな? もう少し協力してくれるだけでいいんだけどなあ。男って結婚式に興味ないんですかね」
「ねえ」
「あれ、真唯子さん?」と突然呼ばれて驚いた。
少し先の方で綾仁くんがこちらの方を見ていた。
駆け寄ってきたので「もしかして芋煮?」と尋ねると「はい」と答えた。
聞くとサークルのメンバーと芋煮をしていたらしい。わりと近くにいたらしかったが、気がつかなかった。
隣にいた中村が「あ……天野先生がいる」と震える声で言うから何かと思ったら、「え、天野さんと知り合いなの?」と綾仁くんが驚いた。
誰だと思っていると、中村が前にイケメンドクターと騒いでいた先生が綾仁くんの肩越しに見えた。
その視線に気がついたのかこちらに目を向けたけど、中村は別の先生を担当しているから、直接面識はないはずなのに私の影に隠れて恥ずかしがる。
いやいや、そこまでしなくても。こっちに来るはずはないよと言ってあげたくなった。
だけど予想は外れて、天野先生はこちらの方へ向かってくる。
「来る……来るっす。イケメンが来るっす」と後ろに隠れて実況中継をするので、動けなくなる。
先生は綾仁くんの横に立つと、私の肩越しに向かって「久しぶりだな。顕人」と声をかけた。