夢恋・second~その瞳に囚われて~
そっと伸びてきた拓哉の左手が、私の頬を優しく包む。

「俺が過去にしたことを、許してもらうつもりなんてない。その事実を忘れなくてもいい。俺を恨んだままでもいいんだ。……だだ、これからの俺を見ていてほしい」

「これから……? この先のこと?」

ふたりの行く手に、重なる未来があるとでも言いたいの?
あなたは結婚してしまうのに。
本当に好きだった人と、ようやく結ばれるのに。

「うん。……必ずもう一度、俺を好きにさせるから」

「好きにさせるだなんて。私は拓哉をずっと好きよ。本当は嫌いになんてなれなかった。今も、あの頃の気持ちとなにも変わらないわ。それを認めただけよ」

私がそう言うと、彼はすっと手を引いて顔を伏せた。

「あんまりそういうことは言わないで。俺、きっと今、すごい顔になってるから」

私は思わずクスッと笑う。

「耳が赤いわ。本当に照れ屋なんだから」

「言うなって。本当に恥ずかしいんだよ」

そんな彼を見ながら、今にも泣き出しそうになったけど、私は笑顔を崩さなかった。

これでいい。拓哉に結婚して幸せになってもらいたいから、私に対する償いをさせてあげる。
あなたの心の中にある罪悪感を軽くすることに、私は協力する。

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