夢恋・second~その瞳に囚われて~

「やっぱり帰るわ。いけないことよね。佐伯さんにふられてやけを起こしたのよ。本当は、ダメだとわかってたの。気持ちを伝えたかっただけなのよ」

本当は、佐伯さんは関係ない。
だけど他に理由が思いつかなかった。

今になって怖気づいた、弱気な自分がもどかしかった。だけど会社の話を聞いて、この先を進む勇気がなくなっていた。
彼女との結婚にこめられている意味が、痛いほどに心に突き刺さっている。
そんな私が咄嗟に立ち上がると、私の手を彼は強い力でぐっと掴んだ。

「俺がこのまま君を見逃すとでも?馬鹿にしてるのか。俺の反応を見て楽しんでいたとでもいうのか」

拓哉の顔色が変わる。険しく歪んだ表情に、私は彼から目を逸らした。

なんと思われてもいい。あなたに後悔はしてもらいたくない。

「私だって本当は一緒にいたい。だけど__」

__ブーッ、ブーッ。

そのとき、テーブルの上にある拓哉の携帯が揺れた。
ふたりでそちらを見る。

『花木理恵子』。
彼女の名前が画面に映っていた。

「……ね?神様は見てるの。私たちに未来がないことをこうして伝えてきたのよ。冷静にならないと、大変なことになるっていってるの」

それだけ言うと彼の手を振り払い、私は部屋を飛び出した。

「芹香!」

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