夢恋・second~その瞳に囚われて~
「あ、いえ。すみません。よ…よろしくお願いします」
私が言うと、拓哉は手を差し出してきた。
「え」
「握手。同じ顧客を担当するので」
えっ。私が拓哉のアシスタント?
そんな…。
「えー。芹香、ずるーい」
「島村はよこしまだから、あえて外してやったよ」
「えー課長!ひどーい。私、超頑張るのに」
「だからお前は、『超』とか言うなって」
皆が再び笑う。
私は拓哉の手を見て戸惑う。
どうしたらよいか分からなくて頭がパニックだ。
「あっ、あの。私…、もう行きます」
思わずその手を無視して走り出した。
なんで今さら現れるのよ。
どうしてそんなに普通にできるの?
私は心が張り裂けそうなのに。
あの日、私を捨てたくせに。
他の人を選んだくせに。
私はそのままトイレに駆け込むと、個室に入り両手で顔をおおった。
変わらなかった。私の記憶の中で笑う顔も、いつも心に囁くその声も。
どうしたらいいか、分からない。
一瞬話しただけで、こんなに心が乱れるなんて。