夢恋・second~その瞳に囚われて~
涙を流して抱き合ったのが、まるでなかったことのように、淡々と部署に戻ると、急いで準備を整え社用車に乗り込んだ。
彼が私の身体を離した瞬間、『ごめん』と呟いたきりだ。
この想いは、とうとう行き場をなくしたと思った瞬間、不思議と断ち切れそうな気がしていた。
重くて深い悲しみの先に、新たな生活が待っていると信じてる。
「では、我々はこれで。失礼致します」
拓哉にならい、私も取引先に深くお辞儀をする。
「じゃあ秋田さん。戻ろうか」
「はい」
彼に続いて車に再び乗り込む。
「中橋家具さんは、これから南行きの便の主力となる荷主さんだ。荷物を降ろす箇所が決まってるから、増便対応も瞬時にできる。大切な取引になるんだ」
拓哉はそう説明しながら、車のエンジンをかけた。
「同行させていただいて、ありがとうございました。……勉強になりました」
それだけ言うと、会話は途切れた。