夢恋・second~その瞳に囚われて~
「あら。彼女と話すのに許可がいるの?男性ならまだしも、私相手にずいぶん過保護なのね」
由衣さんはからかうように言う。
「そんなわけじゃないよ」
拓哉がムスッとした顔で答えながら、由衣さんから目を逸らした。
初めて見る彼の拗ねた表情を新鮮に感じながら、私は拓哉を見上げていた。
そんな私に気づいた彼が、私を見下ろす。
「芹香。……あんまり見ないで。いつも格好つけてるのがバレるだろ?」
彼の言葉に私は笑った。
「格好つけてるの?私が知ってるいつもの拓哉は、本当の拓哉じゃないの?」
そんな私につられて笑いながら、彼は言う。
「いつもの俺も、本当の俺だよ。君をただ、好きなだけの男だ」
私は驚いて笑うのをやめ、焦りながら小声になった。
「ちょっと。今そういうことを言わないで。誰が聞いているか分からないのに」
「誰に聞かれてもいいじゃない。どうして隠すんだよ」
余裕のある顔で、拓哉は言った。
「だからそれは、私がもっと仕事を頑張って、拓哉に少しでも追いついてから__」
「芹香は充分頑張ってるじゃないか」
由衣さんの前なのに。どうしてこんな話になるの。そう思い、私は反論することをやめて由衣さんを見た。
「あなたたち。イチャイチャしないでよ。続きは帰ってからにして。じゃあ私は行くわね。芹香ちゃん、またね」
由衣さんはそれだけ言うと、クスクスと笑いながら歩いていく。