夢恋・second~その瞳に囚われて~


「はい、どうぞ」

空いている会議室の一室で拓哉と向かい合って座る。

彼が私の前に置いてくれたコーヒーから芳ばしい香りが漂う。

「ありがとうございます」

私がカップを手に取り、息を吹きかけると彼がクスッと笑った。

顔を上げてそんな彼を見た。

「相変わらず猫舌なんだね。変わらないな」

眼鏡を外し、柔らかな笑顔を私に向ける。
恋焦がれたあなたが、こうして目の前にいることに、まだ慣れない。

「いえ、そんなことはないです……」

変わらないものなんてない。あなたの気持ちも、私を愛してくれる人があなた以外に現れたことも。

私が黙ると拓哉は困った顔をした。

「そんなに緊張しないで。純粋に仕事の話をするだけだから」

そう言って彼も湯気の立つカップに口をつけた。



< 26 / 201 >

この作品をシェア

pagetop