夢恋・second~その瞳に囚われて~
そのとき突然、急に視界が暗くなり、身体を包まれた。
「きゃっ。……えっ?」
一瞬、なにが起こったのか分からなかった。
だがすぐに、拓哉が私を抱きしめたのだと分かる。私の肩に顔を埋め、彼は絞るような、くぐもった声で話す。
「ずっと……我慢していた。……過去の話はしないと、君と約束したから。だけど……もう無理みたいだ」
なにを言い出したの?
私の身体は、彼に抱きしめられて緊張して、硬直している。
「……君が佐伯課長の恋人だなんて、本当は信じたくはない。……俺にだって不安はあるよ。君は、彼に疑われるのがそんなに怖いのか。どうして……。なんで君は今、他の人を見てるの」
拓哉の言葉に、私は目を見開いた。
「あれから……ずっと、君を忘れたことなんてなかった。今も……」
待って。それ以上、言わないで。
そう思うと同時に、思わず彼の胸をぐっと押して身体を離した。
「勝手なことを、今さら言わないで!そんな台詞はあなたの大切な人に言うべきだわ!それは、私じゃない。あの日、あなたの隣にいた人よ!!」
ずっと堪えていた涙は、もう、こぼれ落ち始めていた。
こんな風に抱きしめられて、身体を寄せても、二人の距離は変わらない。
私たちの前にあるのは、もう戻れないという事実だけだ。
切ない表情で私を見つめながら、彼はさらに言う。
「大切な人は君だけだよ。……好きになったときから、ずっと変わらない。君は、そんなに簡単に俺を忘れたの?違うだろ?」