夢恋・second~その瞳に囚われて~
「え?」
隣を見る。
「チョコレート。今日、お客さんにいただいたんだ。好きだったよね?」
拓哉が、桃色の小さな可愛い箱を差し出していた。
「ありがとう……ございます」
私がそれを受け取ると、彼は優しい笑顔でふわりと笑う。
「急がせてごめんね。疲れただろ。時間がなくて。明日からは、こんな風にならないようにするから」
チョコの入った箱をギュッと胸に抱く。
先ほど、途中で抜けたのは私の方なのに。
拓哉は悪くない。
「どうぞ食べて。少し休んだら、早く終わらせてしまおう」
私は申し訳ない気持ちで、チョコの箱を開き、中に入っていたトリュフを一粒摘むと、そっと口に入れた。
甘い香りが口の中に広がる。
「美味しい」
私がつぶやくと、彼は、チョコよりも甘い笑顔でクスクスと笑った。
それにつられて、私も笑う。
穏やかさと気恥ずかしさが、私たちを包んでいた。
この状態のまま今夜、佐伯さんに会えば、今まで通りなにも起こらないのかも知れない。
そう思いたいだけなのかも知れないが。