夢恋・second~その瞳に囚われて~
腰を軽く折って、彼女に顔を近づける。
「なっなに?近いよ……っ」
目だけを俺に向けて、彼女は顔を遠ざけようとする。
「逃げないで。……俺を見て」
彼女の顎をひょいと掴んで、元の位置に戻す。
「どうして欲しかったの?……温めるだけじゃ不満なの」
言いながら不意をつき、素早くキスをする。
「ち、ちょ……!たく……」
誰が見ていても構わない。
俺が君を好きなのだと、世界中の人に知られたとしても、なにも問題はない。
足を止めて俺たちを見ている人たちも、祝福してくれているのではないかと思ってしまうほどだ。
「やめてってば……!恥ずかしいでしょ」
芹香は、渾身の力で俺を押し戻し、キスから顔を背けると、キョロキョロと周囲を見渡した。
そして俺の手をぎゅっと掴むと、急に猛スピードで駆け出した。つられて走りながら尋ねる。
「ちょ……!芹香。どうしたんだよ」
俺の問いに答えず、彼女は止まらない。
一刻もここから早く逃げ出したいと言わんばかりに、走り続ける。
そんな俺たちを、たくさんの人が驚いた顔で見ながらよけていく。