夢恋・second~その瞳に囚われて~
そのまま人目を振り払うように、街路樹の裏側に回ると、ようやくそっと、俺の手を離した。
「信じられない。あんなところで……。人がたくさん歩いている、通りの真ん中で……」
睨むように俺を見上げ、再び口を尖らせる。
「俺はしたいときにキスをする。我慢なんてしないよ。誰が見ていても構わないから」
笑いながら言うと、彼女も微かに笑った。
「拓哉は、いつも嘘がないわね。正直だわ。気持ちも、行動も。ときどき羨ましくなる」
「そうかな。まあ、嘘は吐いても得策じゃないからな。……正直ついでに言うと、本当は泊まりに来たら温めるだけじゃ終わらないかな。芹香の想像通りだよ。俺に下心がないわけがない」
「私は別にそんなこと……!」
反論しようとした彼女を、ぎゅっと抱きしめる。
「早く帰ろう。また我慢出来なくなってくる。芹香が可愛いから」
「もう……。せっかくここまでイルミネーションを見に来たのに。拓哉が来ようって言ったのよ。まだ全部見てないよ」
呆れたように言いながらも、俺の背中に手を伸ばし、俺を抱きしめ返してくる。
キラキラ光るイルミネーションよりも、君の喜ぶ顔が見たかった。
本当はこんなイベントには、全く興味がないだなんて言ったら、君はまた怒るかな。
きっともう一度、呆れた顔で笑うんだろう。