夢恋・second~その瞳に囚われて~

「お父さんが経営してる会社?」

「そう。ちょっと面倒なことになってるみたい」

これまであまり家業については、芹香には話してはいなかった。
だからこの程度の説明でいいと思った。

「そう。……あの、大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。今からもう行かないと。芹香は心配しないで。帰りは明日の夜になると思う。ごめんな」

「うん」

芹香の頬に軽くキスをして別れると、俺は慌ただしくタクシーに乗り込んだ。



「父さん。遅くなってごめん」

市街からタクシーで、二十分ほどの郊外にある実家に着くと、父と母と姉が、深刻そうな顔で俺を見た。


「どうしたんだよ。なにがあったの」

< 74 / 201 >

この作品をシェア

pagetop