夢恋・second~その瞳に囚われて~
「拓哉。……とりあえず、話を聞いてくれるか?」
申し訳なさそうに父が言う。
「うん」
「お前しかいないんだ。本当はこんなことを頼みたくはないんだが……__」
父の説明を聞いて、事態が深刻なことが分かった。
今回の事態を回避するには、俺の決断が重要だということも。
「ああ。いいよ。明日だよな。……本当に一日だけで終わるの?」
「ああ。明日だけだ。やってくれるか?」
「いいよ。分かった」
たったの一日だけの話ならば、なんとかなるだろう。
「拓哉。たったの一日だけど、適当なことはできないのよ。社運がかかってるの。失敗はできないのよ」
あっさりと引き受けた俺を見て、姉が心配そうに言う。
「うん、明日だけだし、なんとかやるよ」
そう。問題ない。
芹香に知られることはないだろう。
芹香が俺との関係に、不安を抱いているだなんて知らなかった俺は、彼女に今回の事情を話すつもりはなかった。
実は、俺の今回の役割は、芹香にとってはあまり気分のいいものではないだろうから。
そんな安易な決断が、彼女の不安を増長させ、この先の運命を変えるだなんて思ってもみなかったのだ。